導入事例

東京都千代田区

DX推進気運の高まりと共に、テレワークツールを展開
業務効率化により区民サービスのさらなる向上を目指す

東京都千代田区
  • 安全かつ快適なリモートデスクトップで、駐在先からの幅広い業務対応が可能になるなど、テレワークのメリットがはっきりと実感できた
  • 出勤時間が削減でき、使い勝手にも優れるため、介護中や育児中の職員でも安心して働くことができる環境になった
  • 順調にテレワーク利用者が増えていったことで、更なる働き方改革、DX推進の後押しになった

東京都千代田区 様 イメージ図

コロナ禍を受けてDX推進が加速。非対面による区民サービスとテレワークの必要性が高まる

 千代田区は2021年4月、政策経営部IT推進課にデジタル戦略係を設置し、翌年4月には「千代田区DX戦略」を策定した。その背景を、政策経営部 IT推進課長 加茂義哉氏は次のように話す。「コロナ禍で区民のライフスタイルも考え方も、大きく変わりました。窓口が開いている時間だけの手続きでは世の中の流れに沿うことができず、非対面でも対応可能な新たな区民サービスが求められています。これまでIT推進課の役割はシステムの保守運用が中心でしたが、部門横断的に現場を巻き込み、区民サービスのあり方や職員の働き方を、デジタル技術を用いて変えていくといった取り組みも開始しました。」

 折しも2020年12月、「自治体DX推進計画」にて、中央省庁に加えて地方自治体や独立行政法人なども共同で利用する「Gov-Cloud(ガバメントクラウド)」構想が総務省より示された。「ちょうど我々も基幹システム切り替えの時期でタイミングもよかったことから、同時並行でさまざまなシステムのリプレイスなど、DXに関する取り組みが一斉に始まりました。決して早くはありませんが、多くの事例を参考に、検証しながら進められるのが後発としての強みだと捉えています。」(加茂氏)

 こうした動きと並行して、2020年初頭から拡大したコロナ禍において、千代田区でもテレワークの実施が迫られた。加茂氏は区役所業務のテレワークの難しさと、実施に踏み切った経緯をこう語る。「区役所は個人情報を多く取り扱う上に、窓口で区民の方と向き合い、要望に速やかにお応えすることが基本でした。それでもコロナ禍で非対面を求める声が高まり、窓口にお越しいただく方だけしか手続きできないのはおかしい、という風に世の中の流れが変わりました。そのような声に応えるため、庁内でも何かできることがあるんじゃないか、まずはできることからやってみよう、という意識が生まれました。」

セキュリティ、連携性、使い勝手を評価しテレワークツールに
Soliton SecureDesktopを選定

 テレワークの実現に向けて、千代田区は遠隔で安全に業務を継続できるツールの選定に取り組んだ。区民の大切な情報を日々取り扱う上で、厳重なセキュリティは大前提であった。その結果、ローカルPCに情報が一切残らない画面転送方式を採用し、最終的にSoliton SecureDesktopを選定した。

 加茂氏はツール選定の決め手を「第一にセキュアかどうか。そして情報基盤の全庁LANネットワークシステムとの連携性。そして、タイムラグのない使い勝手。」と語る。「Soliton SecureDesktopのデモでのベンチマーク比較を見て、画面転送のタイムラグがないこと、動画など大容量ファイルについても高速ストリーミングで安定している点などに魅力を感じました。」

 千代田区のICTの方針として、テレワークやWeb会議などの各システムは、一定のセキュリティを担保しながら共通基盤上に統合していくこととした。そのためSoliton SecureDesktopの導入においても、クラウドサービスではなく、細かく運用をカスタマイズできるオンプレミス方式を選定した。

 その背景について加茂氏は「早期に利用するならクラウド方式ですが、いきなりの導入は不安があり、今回はオンプレミスを選択しました。ルールやデータの整備などを行ってからでないと、後々煩雑になる、情報漏えいなどのリスクも高まる懸念があったので、まずは1クッション置いてオンプレミスの中でデータや人的なリテラシー、組織的な制度も含めて整備したかったのです。その上で、ある程度成熟、管理できるようになった段階でシステムをクラウド化したいと考えました。おそらく次のリプレイスタイミングでは、区民情報を扱うシステムも国が掲げるGov-Cloud(ガバメントクラウド)に移行しているでしょうから、その時点での利用システムは、ほぼクラウド化するのではと考えています。」と語る。

 テレワークの対象となる業務は、三層分離のうちマイナンバー業務を対象外とし、決裁を伴う事務処理やグループウェアもあって部門横断的に利用されるLGWAN接続系と、情報基盤の全庁LANネットワークシステムを対象内とした。行政業務そのものをテレワークに置き換えると言うより、庁舎とは異なる環境でも実施可能な業務の範囲を探ることに主眼に置いたという。

管理職からスタートし、利用者からも好評。アンケート結果を踏まえて段階的に利用を拡大

 こうして導入された Soliton SecureDesktopは、部長職を対象に10名から利用が開始された。「本来なら全員一斉でスタートするのでしょうが、当初は敢えて、部長職のみの利用に絞りました。これは管理者自身に何ができるのかを経験してもらい、自部門に広げてもらう効果を期待したためです。」(加茂氏)

 このように始まったテレワークだったが、はじめに実務面での有用性を確認できたのは、宿泊療養施設として都が開放した区内のホテルに駐在する管理職員の業務継続においてだった。 Soliton SecureDesktopを利用して駐在先のホテルからメールの確認や承認、決裁処理などの業務を行えたことで、テレワークのメリットをはっきり実感できたという。後に自らが濃厚接触者となり登庁できない職員も現れ、利用者はさらに増加した。

 加茂氏は、テレワークを実施する際の規定整備の難しさと、その対処を次のように話す。「行政では、土日や夜間の超過勤務が非常に厳しく管理されます。例外扱いにしようとすると、人事、労務などすべての規定を見直さねばなりません。そこで千代田区では、テレワークを出張扱いとしました。」テレワークする場合は、事前に上長に対し出張申請をして、業務を始める前にメールで申告、定時になったら再びメールで業務終了を報告するという運用ルールを定めた。

 Soliton SecureDesktopの庁内への展開について、デジタル戦略係の三上敏治氏はこう話す。「利用する職員に対しては、SIMを搭載したテレワーク専用モバイルPCを新たに用意し、 Soliton SecureDesktopをインストールして配布しました。SIM搭載端末にした理由は、公衆回線や自宅通信を使うとセキュリティ性に不安がありますし、ラストワンマイルでトラブルがあると対処できないためです。利用者には丁寧に説明しましたが、端末自体を初めて利用することもあり、実際にいざ使うとなったときに問い合わせはありました。それらの質問やアンケートデータをもとに、次のステップに繋げました。」

 その後、2021年末には145ライセンスへ拡充し、全管理職員および各所属の一般職員も利用できる環境を整えた。三上氏は、利用者へのアンケート結果について「非常に好評でした。利用者の9割近くは出勤時間が削減されることから仕事の効率や生産性が上がったとの反応で、使い勝手も良い。介護や育児面でも安心で非常に良いとの評価が得られました。操作する端末は違うものの、見ている画面はいつもの自分のPCなので安心感があり、心配していた通信トラブルも、SIM内蔵タイプにしたことでほとんどありませんでした。」と話す。

数値目標を掲げ、テレワーク範囲の拡大と業務効率化による区民サービス向上を目指す

 今後の展開について、三上氏は「利用者からの好評を受けて、2022年度中には専用モバイルPCも200台に増設し、ライセンスもそれに伴って拡大していく予定です。管理レポートでの利用状況や、アンケートによる利用者の声を引き続き確認しながら、今後も拡大していきたいと思います。まだ一部にはテレワークしづらい雰囲気が職場にあるとの声もありますので、我々としてもいろいろな仕掛けを行い、テレワークがしやすい雰囲気を作っていきたいです。」と語る。

 目標については、「千代田区では、独自に庁内アンケートを実施し、各所属における業務として約1,250項目もの業務を洗い出しました。その中でテレワークで完結できる業務は?と聞くと、1,250業務のうち、たった3%しかないことも判明しました。理由を問うと、1つは、紙書類を参照したり、紙で処理しなければならない業務があるからということ。もう1つは、電話や対面での確認が必要だからという回答でした。逆に言えば、ペーパーレス化とコミュニケーションの課題が解消できれば、テレワークは拡大できるということになります。そのため、これからは更にペーパーレス化を進め、職員間のコミュニケーション向上に向けて固定電話の内線スマホ化などを検討しています。さらにチャットを使う、FAQを充実させるなどで、テレワークが難しい業務の解消を目指していきます。Soliton SecureDesktopの導入を皮切りにテレワークで対応できる業務は増えつつあるので、今後更にこの1,250業務をいかにテレワークで完結できる業務にしていくかが、KPI的な数値目標となっています。新たな働き方改革に必要なエビデンスが得られたと感じています。」と語る加茂氏。

 最後に加茂氏は、ソリトンシステムズへの期待を次のように結んだ。「テレワーク時に双方向の音声コミュニケーションを利用したいとの声が多いので、連携の仕組みを運用ベンダーと共に提案して欲しい。ソリトンとは通常、運用ベンダー経由での会話ですが、いつもうまく連携いただき感謝しています。DXの本質は業務効率を高め、区民サービスをよくしていくことです。今後も大きく変化する中で、ソリトンには引き続き有用で連携性が高く、職員が利用しやすいソリューション提供に期待しています。」

お忙しい中、有り難うございました。

※本ページの内容は、2022年8月作成時の情報に基づいています。

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