導入事例
東海旅客鉄道株式会社
あらゆる現場で、すべての人が、当たり前に使える
安全と使いやすさを配慮しDXを促進
- 利用者のセキュリティ意識に依存しない 安全な仕組みづくりを実現
- 私用端末によるアクセスを遮断しつつ 各社の許可端末がフレキシブルに利用できる
- 管理画面やログも見やすく 現場で困らないシステム運用を実現
東海旅客鉄道株式会社様 施工支援システムイメージ図
工事現場の生産性向上のため「JR東海施工支援システム」を導入
日本の大動脈を支える東海道新幹線、さらに2027年の先行開業を目指し建設が進むリニア中央新幹線を管轄する東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)。同社は在来線を含む土木・建築工事の設計および施工管理業務の効率化と生産性向上を目指し、クラウドサービスを活用する「JR東海施工支援システム」を導入、2022年4月より本格利用を開始した。
建設工事部 土木工事課 担当課長の佐々木敦司氏は、本システム導入の経緯を次のように話す。
「建設、施設保守部門の土木・建築工事では、施工を受け持つ協力会社との間で、紙の書類のやり取りが大量に発生します。このような、紙やFAX、電子メールを中心に行ってきた業務は近年、働き方改革や生産性向上を目的に、各所で電子共有化が進んでいます。当社でもICT 活用により業務を効率化し、より安全や品質管理に注力できる環境整備への必要性が高まり、2018 年頃から検討を開始しました。」
今回、オンプレミス環境での開発ではなく、JR東海として初となるSaaS型の工事情報共有サービスを採用している。その理由について佐々木氏は「これまで当社では情報セキュリティ確保の観点からクラウドサービスの利用は行っておらず、当初は閉域網でのシステム開発も検討しましたが、最新技術をタイムリーに取り入れながらより良いものを低コストで、そしていち早く活用するためには、市中の汎用的なサービスを利用することが最適と判断しました。そこで、国土交通省が定める要件を満たしたクラウドサービスを基盤として採用し、クラウドに保存可能なデータの質を見極めた上で、業務利用に耐えうるルールづくりに取り掛かりました。」と語る。
セキュリティ対策として利便性に配慮した認証サービスを検討
工事情報共有サービスは社内だけでなく、施工を担当する協力会社など社外も含めて広く利用されるため、セキュリティの確保と利便性の両立が重要となる。佐々木氏は本システムに求めた要件として、以下を挙げる。
「漏えいのリスクが高い ID とパスワードに依存しない、多要素による認証が可能なこと。フレキシブルに端末選定ができると共に、私用端末など不適切なデバイスからのアクセスがきちんと遮断できること。これらの要件を満たした上で、利用者の使いやすさにも配慮した認証の仕組みが必要でした。」
同社が採用した工事情報共有サービスには、これらの要件を満たす多要素認証の機能は備わっていなかった。そこで情報収集を重ねた佐々木氏が出会ったのが、Soliton OneGate だった。「ゼロトラスト関連のイベントに参加し、ソリトンの講演を聞いたときにまさにこれだ、と思いました。当時はまだ OneGate がサービスインさ れる直前の段階でしたが、すぐにソリトンの担当者と打合せを持ちました。」
多要素認証の検討に際しては当然、他社との比較も行ったとのことだが、佐々木氏は最終的に OneGate を採用した理由を次のように語る。
「具体的な要件を詰める際、ソリトンが一番しっかりと対応、フォローいただけて安心感がありました。我々はこのようなクラウドサービスの採用が初でしたが、自社が定める厳格なセキュリティ要件もクリアしてくれました。試行においても、システムベンダーとの認証連携に関する協議などもすべて、安心してお任せすることができました。」
管理画面やログも見やすく現場で困らない運用を実現
こうして導入が進んだ工事情報共有サービスと認証サ ービスを「JR東海施工支援システム」と命名。2021年4月から、土木、建築系統の主だった約 20か所の現場で試行を開始し、OneGate により協力会社を含むすべての利用端末にデジタル証明書が配布された。佐々木氏は「証明書が誰に何枚配布されていて、有効/失効のステータスもすぐに把握でき、安心して展開できました。一度証明書を入れてもらえば、後は当たり前のように使えるようになるので、利用者からの不満の声もなく、困ることはありませんでした。」と語る。
本システムの運用を担当する建設工事部 土木工事課の梁瀬勇太氏は、OneGateによる認証サービスの成果について
「OneGateでは利用者のパスワードはセルフサービス化されており、管理者側で利用者パスワードを管理する必要がありません。管理画面も直観的にわかりやすく、誰が、いつ、どの端末から入ったのかも一目で分かり、利用者からログインできないといった問い合わせにも、即座に原因把握ができます。IT を専門としない我々でも無理なく運用できる安心感があり、人が変わっても形骸化されないシステム導入ができました。」と評価する。
JR 東海は試行にあたり、既存ルールに沿った紙書類の電子化だけでなく、必要性を確認し、書類自体を削減する取り組みも実行。その結果、紙書類のファイリング廃止や検索時間短縮による書類管理業務の効率化に加えて、現地での確認時間や現場から事務所への持ち帰り時間削減などの導入効果が得られた。併せて、工事しゅん功後の情報をデータで保管することで、他の工事への活用も容易となるなど、大きな手ごたえを感じたという。
他業務にも水平展開し、全社での業務効率化とDX推進を目指す
JR 東海は試行における成果を踏まえ、2022年4月より当該システムの本導入を実行した。限定的だった対象現場と利用者を順次拡大。試行時点で500名ほどだったユーザーは、本年度内には数千名を超える見込みだ。今回導入したシステムでは、設計・工事業務または箇所ごとにJR東海と協力会社でグループを設定することで、デジタルデータによる書類や写真などの共有、承諾願・報告書・覚書などの承認に加えて、掲示板での情報共有や、しゅん功成果物の提出も可能となった。また点群※1 データや 3 次元モデル、CAD図面の表示も可能となり、これらを利用したBIM/CIM※2 活用検討にも着手している。
佐々木氏はさらなる展開と、ソリトンへの期待を次のように結んだ。
「OneGate によりセキュリティを確保した上で、クラウドサービスと iPad などモバイル端末を活用する仕組みは、他の系統業務にも水平展開が可能です。また結果的に、コロナ禍のような事態が起きた際にもリモートで事業を継続できる仕組みも実現することができました。これからも当社はさまざまな ICT 技術の導入検証を進め、全社での業務効率化、DXを推進していきます。当社にとって情報セキュリティ確保は非常に大きな命題です。ソリトンには引き続いてのサポートと、さらなる安全と利便性を両立するサービスの提供に、期待しています。」
- 「点群」:UAV写真測量、地上レーザースキャナー等による 3 次元測量によって得られた 3 次元座標を持った点の集合。
- 「BIM/CIM」:計画、調査、設計段階から3 次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3 次 元モデルを連 携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取り組み。
お忙しい中、有り難うございました。
※本ページの内容は、2022年6月作成時の情報に基づいています。