導入事例
愛媛県
災害時にも止まらない行政へ
BYODで実現した“庁外からの安全な業務環境”
四国の北西部と瀬戸内海に浮かぶ島々から構成され、人口は約125万人です。県庁では2024年3月に「第2期愛媛県デジタル総合戦略」を策定し、行政・暮らし・産業のさまざまな分野におけるDXに取り組んでいます。
※本ページの内容は、2026年1月作成時の情報に基づいています。
課題
- 働き方改革や緊急対応のため、庁外からシステムを活用したい
- 支給端末がなくても済むよう、BYODを安全に使いたい
- 若手職員の定着に向け、快適に働けるICT環境を整えたい
導入効果
- デジタル証明書認証により、庁外から安全にシステムを利用可能に
- データを端末に残さないブラウザにより、情報漏えいリスクを低減
- BYOD活用により、自由度が高く効率的な働き方を実現
愛媛県様 イメージ図

災害対応と業務継続を見据えたシステム刷新
南海トラフ地震や豪雨災害のリスクを抱える愛媛県では、災害時にも業務を止めない情報アクセス環境の整備が急務となっています。こうした課題に取り組んでいるのが、愛媛県庁のDX推進を担うスマート行政推進課です。同課のスマート行政情報グループがセキュリティを含むシステムインフラの企画・運用を担い、業務改革グループがそのインフラを活用した業務プロセスの改善提案を行っています。
取り組みのきっかけは、既存の庁内LANシステムの保守期限に備えた次期システムの検討でした。その過程で浮かび上がったのが、庁内LANへのアクセスが支給端末に限られているという課題です。スマート行政情報グループ担当係長の峯松 啓太氏は当時をこう振り返ります。

「愛媛県は南海トラフ地震での被害が予想されており、豪雨被害の経験もあります。災害時にも業務に必要な情報へアクセスできる環境が求められていました。支給端末が手元になくても、庁外から庁内LANにアクセスできる仕組みが必要だと考えました」
同じ課題を利用者の立場から感じていたのが、デジタルシフト推進課 データ利活用推進グループ主任の渡部 良樹氏です。
「2年ほど民間企業に出向していた際は、社内情報へどこからでもアクセスできる環境が整っていました。県庁に戻ってからは端末の持ち出しに制約があり、大きなギャップを感じていました」

情報漏えいを防ぐBYOD設計と製品選定
こうした課題への解決策として浮上したのが、BYOD(私物デバイスの業務利用)の導入です。峯松氏は「緊急時など、常にPCを持ち歩けるとは限りません。一方、スマートフォンは職員が日常的に携帯しています。業務継続の観点から、職員所有のスマートフォンの活用が適していると考えました」と語ります。
ただし、セキュリティ面の懸念は慎重に検討する必要がありました。特に重視したのは2点です。1つ目は、ファイルを端末のローカル領域に保存させないこと。個人端末へのデータダウンロードは情報漏えいに直結するリスクがあります。2つ目は、デバイス単位のアクセス制御です。想定外のデバイスから庁内LANへ接続されることがないよう、確実な制御を求めました。
グループウェアのリモート利用も含め、これらの条件を明記した上で一般競争入札を実施しました。採用が決まったのがSoliton SecureBrowser(以下、SecureBrowser)です。
スマート行政情報グループ主任の三村 由典氏は「適正な価格に加え、ローカル領域へのファイル保存の禁止、デジタル証明書による端末認証という入札要件に合致していました」と振り返ります。

導入作業は販売店を窓口に進み、2024年3月に利用を開始しました。
全庁研修と申請制で実現した安全な運用体制
個人端末を業務に使う性質上、導入後の運用は慎重に設計されました。全庁を対象に、BYODとは何か、何ができるのか、情報漏えいのリスク、利用上の注意、運用方法などを扱う集合研修を実施しています。内容は動画でも閲覧できるようにし、利用希望者には必ず視聴してもらっています。問い合わせ窓口も設置し、疑問に対応できる体制も整えました。

業務改革グループ主事の梅木 裕一朗氏は「全員が希望するわけではないので、使いたい人に申請してもらい、運用方法やリスクを理解した上で利用してもらっています」と説明します。
現在の利用者は全職員約5,000名のうち約1,000名(約20%)で、徐々に増加しています。利用手続きが完了すると、各自がマニュアルを参照しながらスマートフォンにデジタル証明書をインストールし、利用を開始できます。
隙間時間の活用と、若手職員の定着に期待
現在SecureBrowserから利用できるのは、庁内サーバーで稼働するグループウェアです。スケジュール、職員間のメッセージ、プロジェクト管理、掲示板、メールなどの機能を利用でき、中でもスケジュール確認とメッセージ機能の活用が多くを占めます。
峯松氏は「電車の中でわざわざPCを開くのは手間ですが、スマートフォンなら手軽に確認できます。以前は出張から戻ると未読メッセージへの対応に追われていましたが、移動中に処理できるようになり、出張時の負担が減りました」と話します。三村氏も「朝、自宅でその日のスケジュールを確認できるので、仕事の段取りがつけやすくなりました」と評価します。
渡部氏も「重いPCを出張に持参する必要がなくなりました。隙間時間や自宅からでも情報にアクセスでき、急ぎの対応もその場でできるので助かっています」と語ります。
働き方改革の観点からも手応えが出ています。
梅木氏は「従来からテレワークには取り組んできま したが、移動中などの隙間時間を活用できるよう になり、業務改善につながっています」と話します。 若手職員の定着という観点からも期待が寄せられ ています。
業務改革グループ主事の本田 祥理氏は「働く環境にストレスがあると転職を考える若手も少なくありません。県庁はICT環境が古いというイメージをもたれがちですが、BYOD活用など快適に働ける環境が整っていることを積極的に発信し、若手の定着につなげていきたいと考えています」と話します。

現在SecureBrowserはグループウェアとのみ連携していますが、今後は電子決裁システムや各種申請システムへの拡大も視野に入れています。
峯松氏はこう締めくくりました。
「便利に活用している職員がいる一方、まだ使えていない職員もいます。今後はより一層、周知に力を入れていきたいと思います」
お忙しい中、有り難うございました。